เข้าสู่ระบบステファンとアナマリアに連れられて、ギルドの裏手にある闘技場の様な場所に出た。正方形の舞台に、周囲には見物できる客席まである。冒険者同士が互いに切磋琢磨するためと、冒険者適性を見る目的で造られたものだろう。
「私はここでカリナ様の勇士を見学させて頂きますね」
「ああ、どうせすぐ終わる。気楽に見学しておいてくれ」
舞台に飛び乗って、ストレッチなどの準備運動をする。そこへ、ギルドの裏口から五人組の冒険者達が現れた。見るからに柄が悪そうである。
「おい、ギルマスー! 来てやったぞ。ちっ、こんな小娘の相手をBランクの俺様がやらされるとは面倒臭くて仕方ねえ」
赤毛の坊主頭の男が悪態を吐いた。装備からして格闘家だろう。
「まあまあ、イヴォー、所詮新人の適正テストみたいなもんでしょ? すぐ終わりますって」
黒髪の魔法使いのローブを着た青年がイヴォーという多分リーダー格の男にごまをする。
「こんな勝負が見えている模擬戦なんて時間の無駄だ」
青髪で聖職者の法衣を纏った男も愚痴をこぼした。ああ、本当に感じが悪い連中だなとカリナは思った。
「ま、私の実力なら誰が相手でも楽勝よ」
薄いピンクヘアの女性も軽口を叩く。身なりからして恐らく剣士だ。金属のプレートのライトメイルに腰にはレイピアを差している。
「でもBランクを指名して来るくらいだから……。凄い相手だったらどうしよう……」
最後に白髪の青年が竪琴を持って現れた。音楽によるバフをかける役目だろう。しかし、この男だけは気弱そうである。
グレイトドラゴンズというギルド名のメンバーが集まったところで、ステファンが声を掛ける。
「よく来てくれた。今日の模擬戦は今舞台にいる少女が相手だ。召喚士で魔法剣士でもある。まあ気を抜かない様にな」
「はぁ? 召喚士だって? おいおい、ギルマス、冗談だろ? そんな絶滅危惧種が今いるのかよ?」
「イヴォーよ、相手はカシュー国王陛下からの推薦のあった人物。そしてカーズ王国騎士団長の妹君でもある。油断すると死ぬかもしれんぞ」
「へっ、そうかい。兄の七光りってやつかよ。舐めてんじゃねえぞ。俺様一人で十分だ。さっさとボロ雑巾にしてやるよ、小娘!」
はあ、と溜め息を吐いたカリナは、いきり立っているイヴォーという男を見てうんざりしたが、この程度の相手なら五人一気に相手に出来なければ話にならない。
「いや、お前ら全員で構わないぞ。こっちには召喚術がある。相手が何人でも同じだ」
その言葉に頭に来たイヴォーは残りのメンバーに声を掛けた。
「そうかよ、じゃあ此方は格闘家の俺に魔法使いのニーコ、僧侶のサムエル、剣士のレモナ、それと吟遊詩人のジュキーの全員で相手をしてやるぜ。後で泣いて謝っても知らねーからな。後悔させてやるぜ小娘」
「やれやれ、中途半端に力を手にした輩は直ぐに増長するんだな。来いよ、その鼻っ柱をへし折ってやるから」
カリナの挑発に煽り耐性ゼロのグレイトドラゴンズ(笑)は全員が舞台の上に乗った。カリナの前には格闘家のイヴォーと剣士のレモナが立ちはだかる。その後ろに魔法使いのニーコと僧侶のサムエル、最後尾にバッファーである吟遊詩人のジュキーが陣取った。
「まあ、彼女の力量を確かめるにはこのくらいのハンデがある方がいいのかもしれんな。では始めろ!」
ステファンがそう言うと、レモナが剣を抜き、イヴォーが構える。そしてニーコは魔法の詠唱を始め、サムエルは味方の怪我に備えて回復の準備をする。そして最後尾からジュキーの竪琴が響き渡った。
「ほう、なかなかの連携だな。伊達にBランクではないということか」
カリナは剣も抜かずに棒立ちである。それを見たアナマリアがルナフレアに「大丈夫なのですか?」と尋ねたが、ルナフレアはふふっ、と笑みを浮かべただけだった。
「剣も抜かないとはふざけやがって。喰らえ!」
イヴォーの正拳突きを軽く左手で受け止めると、がら空きになったボディにカリナの右拳がめり込んだ。その一撃でイヴォーはあっけなく失神した。
「なっ、どういうこと?!」
即座に左手で刀の
「あれがカリナ様の力です。まだまだ本気ではありませんよ」
「ななな……」
ルナフレアの言葉にアナマリアは言葉が出なかった。
「くっ、まさかこんな奴がいるなんて。ならば喰らえ、炎よ! ファイアー・ボール!」
ニーコから放たれた火球がカリナに向かって来る。
「魔法剣ブリザード」
パキィイイイイイン!!!
飛んで来た数発の火球は斬り裂かれて凍結し、その場に落ちて砕け散った。
「なあー!? 僕の魔法が凍り付くなんて!」
「じゃあ次はお前だな。大地の
ドドドドドドッ!!!
撃ち出された石弾がニーコの身体に炸裂すると同時にイヴォーの腰ぎんちゃくぽい男は後ろ向きに倒れた。
「やるじゃないか、だけど僕をこいつらと一緒にしないことだね。さあ、神聖なる輝きよ、敵を討て! ホーリー・ジャベリン!」
輝く光の槍が放たれる。
「召喚、ホーリーナイト」
ガキィン!!!
瞬時に呼び出された白騎士の巨大な盾によって、サムエルの魔法は簡単に飛散した。驚いているその隙に背後へ周り、首筋に剣の柄での一撃を喰らわせると、サムエルもその場に転がった。
「残るは一人だけだな」
「そんな……。みんながこんなにもあっさりとやられるなんて。だったらこの竪琴の威力で君の歩みを止めてみせる。ストリンガー・レクイエム!」
奏でられていた竪琴の弦がカリナに巻き付き締め上げた。
「さあ、これでもう身動きは取れない。次に僕が技の威力を上げたら四肢がズタズタになるよ。もう降参してくれ」
「なるほど、竪琴の弦が攻撃にも応用できるんだな。だが、私には意味がない。召喚、シャドウナイト」
呼び出された黒騎士の大剣が竪琴の弦を斬り裂いた。
「そんな、ストリンガー・レクイエムを斬り裂くなんて……」
「妙だな、お前はこの中で一番強い力を秘めているのに。なぜこんな三流ギルドのメンバーでいるんだ?」
「そ、それは……」
「お前の演奏による能力の底上げがなかったら、他のメンバーはもっと話にならなかったぞ」
「言わないでくれ……。僕は彼らと友人なんだ。例え良いように使われていてもそれは変わらないから……」
「そうか、まあお前にも都合があるんだろう。じゃあ最後は演奏勝負をしようか。来たれ、
カリナの足元から海の様な水しぶきが舞い、そこから蠱惑的な衣装を身に纏ったセイレーンが姿を現す。そしてカリナの頬に口づけすると、ふわりと笑った。
「お久しぶりー、御主人。今日は何の用かな?」
「ああ、あの男の竪琴とお前の歌声で勝負してやってくれ」
突然現れたまるで人魚の様な美しさを秘めたセイレーンにジュキーは目が釘付けになる。
「くっ、召喚体か。だったら僕も全力を尽くすのみ。竪琴よ応えてくれ、聞け、この調べを! ストリンガー・ノクターン!」
奏でられる音の威力がカリナ達を飲み込んだ。このまま反撃しなければ五感を奪われて意識を失う程の力を持った美しい旋律である。だがカリナとセイレーンは顔を見合わせて、にっと笑うと、セイレーンが歌声を上げ始める。
「見事な旋律だな。だが相手が悪かった。ギリシャ神話において海の魔物と怖れられるセイレーン。その歌声は何百という船の乗客を狂わせ、幻覚に囚われた者を貪り食うとさえ言われている。規模が違うんだよ」
セイレーンが発する歌声がジュキーの竪琴を打ち消していく。ヘヴンリー・コンチェルト。聞く者全てを天に導くと言われるセイレーンの優雅な歌声が竪琴の音を完全に凌駕した。
「うわあああああああ!!!」
衝撃で吹き飛ぶジュキー。そして手放した竪琴が視界の前に転がった。これで全員戦闘不能。カリナの圧倒的な勝利であった。
「そこまで、勝者カリナ!」
ステファンの声が木霊する。その後気を失ったグレイトドラゴンズ達に簡単な治癒魔法を施すと、彼らは意識を取り戻した。たった一人の少女にあっさりとのされた彼らは、「次は負けねーからな」と負け惜しみを言って舞台を去って行った。
「ご苦労だったなセイレーン。また頼む」
「うんうん、いつでも呼んでよねー」
そう言って笑うと、召喚体達は光の粒子となって消えて行った。カリナは見学席で見ていたルナフレアにピースをすると、舞台から降りた。そこへステファンが近づいて来る。
「お見事でした。彼らは最近調子に乗っておったのですよ。これで上には上がいると思い知ったでしょう」
カリナはその言い草に、なるほどと思った。王の推薦が出る程である。合格するのは当然であるという前提でひと芝居打ったのだろう。
「謀ったな。まあこっちにとってはちょっとした運動になったけどさ」
「ははは、お見通しでしたか。さすがは陛下の推薦なだけはある。推薦通り、いや、Bランクでも歯が立たないのですからBランクを与えなければなりませんね。召喚魔法もお見事でした。陛下からは私から書状を送っておきます。それでは受付で新規のカードを発行致しますので、お受け取り下さい」
「ありがとう、それならありがたく頂戴しようかな」
「良かったですね、カリナ様」
見学席から降りて来たルナフレアが声を掛けて来た。
「そうだな。でも悪かったよ。変なことに巻き込んだみたいになったし」
「いいえ、カリナ様の勇士が見れて満足です。やはりカリナ様は私がお仕えするに値する人物です」
そこまで褒められると何だかむず痒くなったカリナは話題を逸らす。
「さて、時間も食っちゃったし、カードを発行して貰ったらショッピングやらお勧めされたお店に行ってみよう」
「はい、そうですね。楽しみにしております」
そう言って笑うルナフレアは本当に綺麗に見えた。
◆◆◆ 「はい、こちらが新しいカードになります。身分証になりますので無くさないで下さいね。首から掛けて服の中に入れておくといいかもしれませんよ」受付で新品のカードを受け取る。とりあえずは首から下げておくかと思い、紐を頭にくぐらせる。これで今日の用事は終わった。
ふと周囲を見渡すと、大勢の冒険者達が噂話をしている。
「あのお嬢ちゃんが単独でグレイトドラゴンズをボコったらしいぞ」
「すげえな、まだあんな女の子だってのに……」
「まあ奴らは調子に乗ってたからな、いい気味だぜ」
「それにしても可愛いな。俺、声かけてみようかな?」
何やら物騒なことを言っている輩もいる。ここにいるのは危険だと察知したカリナはルナフレアの手を引いて、さっさとギルドから退散するのであった。
街の通りに備え付けられている時計を見ると、もう昼を回っていた。カリナはルナフレアと一緒に衛兵に勧められたアンティークというレストランを目指して、商業区のマップを見ながら歩き始めた。
「うわぁ、凄い流れですにゃ。落ちたら溺れるにゃ」「泳いでいくしかなさそうだな。だが……」 カリナは自身の服――メイド隊が丹精込めて作った猫耳フードのローブを見た。この激流に服を着たまま飛び込めば、水の抵抗で動きが鈍るし、何よりこの服が台無しになってしまう。ルナフレアは「側付き」としてカリナに尽くしてくれているが、その愛が重い分、服を粗末に扱うと後が怖い気がする。「脱ぐぞ、隊員」「へ? ここでですかにゃ?」「ああ。濡れた服は重りになる。それに服をダメにしたらルナフレアに何を言われるか分からん」 カリナは躊躇なくローブとインナーを脱ぎ捨て、全裸になると、それらを素早く畳んでアイテムボックスに放り込んだ。隊員も自分の装備をしまう。「しっかり掴まってろよ!」「はいにゃ!」 カリナは裸のまま隊員を胸に抱くと、助走をつけて暗い水面へと躍り出た。 バッシャァァンッ!! 突き刺すような冷たさが全身を包む。流れは速いが、カリナの身体能力ならば制御不能というほどではない。彼女は水流に身を任せつつ、出口を目指して激流に流され続けた。 ◆◆◆ 数十分後。暗い水路の先に光が見え、カリナ達は勢いよく外の世界へと吐き出された。 ザバァァァッ! 顔を出したのは、世界樹の森の一角にある静かな泉だった。結界の外に出たようだ。カリナは浅瀬に上がり、濡れた髪をかき上げた。太陽の光が濡れた肢体を照らし、水滴が真珠のように白い肌を滑り落ちる。「ぷはぁ、冷たかったな。風邪を引く前に拭かないと」 アイテムボックスからバスタオルを取り出し、隊員と自分の水気を拭き取っていると――不意に背後の茂みが揺れ、人の気配がした。「……誰だ」 カリナはタオルで身体を拭きつつ、鋭い視線を向ける。そこに立っていたのは、深緑のローブを目深に被り、顔を隠した男だった。男は一瞬息を呑み、呆然とカリナを見つめていたが、やがて低い声で尋ねてきた。「……お前は、精霊か?」 森の奥深く、清らかな泉に佇む全裸の美少女。その神秘的な光景に、男は人ならざるものを見たような錯覚を覚えたようだった。だが、カリナは冷静に首を横に振る。「いや、私は冒険者だ」「隊長は最強の召喚士にゃ、控えおろうにゃ」「……そうか。すまない、あまりにも精霊のように美しかったもので、見間違えたようだ」 男はフードの下でバツが悪
一夜明け、ザラーの街に清々しい朝が訪れた。窓から差し込む陽光に目を細めながら、カリナはベッド脇の例の「メイド隊からの衣装」セットの二つ目を取り出した。「……さて、今日の『着せ替え』はなんだ?」 恐る恐る広げたその衣装を見て、カリナは天を仰いだ。「あいつら……本当に森に行く気があるのか?」 そこに入っていたのは、白を基調とし、鮮やかな黄緑と黄色のリボンやフリルがあしらわれた、体のラインが出るタイトなローブ。しかもフードには、ふっくらとした「猫耳」がついている。インナーは紫に白と黒のデザインが施されたシックなワンピースだが、足元はガーターベルト付きの白いニーハイソックスに、黒地に白いラインが入ったショートブーツという、絶対領域を強調するような組み合わせだ。「防御力と動きやすさは最高級の素材らしいが……この猫耳は必要なのか? 完全にコスプレじゃないか」 ブツブツ文句を言いつつも着替えて鏡の前に立つと、そこにはあざといほどに可愛い「猫耳魔法少女」が完成していた。悔しいが、サイズも完璧だ。「ま、誰も見てない森の中だ。我慢するか」 フードを被って猫耳をピコピコさせながら、身だしなみを整えて隊員と共に階下へ降りる。「おはようございますにゃ、隊長。今日もバッチリ可愛いですにゃ」 「うるさい。行くぞ」 食堂に降りると、女将さんが満面の笑みで駆け寄ってきた。「おはよう、英雄さん! 昨日はあんたのおかげで、夜遅くまで祝杯を挙げる客で大忙しだったよ! 街を救ってくれて本当にありがとうねぇ」「いや、私はただのきっかけだ。皆が頑張ったからだよ」「謙虚だねぇ。さあ、今日はサービスで特盛にしておいたよ! しっかりおあがり!」 出された朝食は、厚切りのベーコンエッグに、山盛りのサラダ、そして焼きたてのパンと具沢山のスープ。カリナと隊員は感謝してそれを平らげ、エネルギーを充填した。 宿を出て、人目が少ない場所でペガサスを召喚する。カリナは猫耳フードを抑えながら天馬に跨り、北西の空へと舞い上がった。 ◆◆◆ ザラーの街を離れ、しばらく飛ぶと、眼下の景色は荒野から深い緑へと変わっていった。 『世界樹の森』。 その名の通り、視界の果てまで続く樹海だ。そしてその遥か彼方には、雲を突き抜けるほど巨大な一本の樹――世界樹が鎮座している。「でかいな……。遠近感がお
「うおおおおおおっ!! 勝ったぞぉぉぉぉ!!」 「我々の勝利だ! アレキサンド万歳! 緑の戦女神、万歳!」 総裁バズズが燃え尽き、残った魔物の群れが霧散したのを見届けた瞬間、砦に詰めていた騎士達や冒険者達から、大地を揺るがすような歓声が爆発した。彼らは武器を放り出し、兜を脱ぎ捨てて、戦場の中心で悪魔の素材を回収していたカリナの元へと駆け寄ってくる。「すげえ……本当に一人で、軍勢ごと悪魔を倒しちまったぞ……!」 「なんて強さだ、それに近くで見ると本当にお人形さんのように可愛らしい……!」 「あの細い腕のどこにあんな力が……。まさに戦場に降り立った女神だ!」 血と土埃にまみれたむさ苦しい男達が、キラキラした尊敬の眼差しでカリナを取り囲み、口々に称賛を浴びせる。その中心で、カリナの肩に乗ったケット・シー隊員は、ふんぞり返るように胸を張り、これ以上ないほどのドヤ顔を晒していた。「ふっふーん! 見たのにゃお前達! これが隊長の実力にゃ! もっと褒めて、もっと崇めるにゃ!」 まるで自分が倒したかのような態度だが、誰もそれを咎めない。むしろ「何だこの猫可愛いな」と頭を撫でられ、満更でもなさそうだ。 一方、当のカリナは居心地が悪そうに頬を掻いた。「いや、戦乙女とか女神とか、そういうのは止めてくれ。私はただの冒険者だよ」「ご謙遜を! 貴女様は今日、間違いなくこのザラーの街を、いや、アレキサンドの危機を救って下さったのです!」 指揮官を務めていたアレキサンドの騎士団長らしき男が、カリナの前に進み出て最敬礼をした。「この武功、必ずや本国のアレキサンド国王陛下にご報告致します。貴女様のような英雄が訪れてくれたとなれば、陛下も大層お喜びになるでしょう。是非いつか、王都へもお越しください。国を挙げて歓迎致します!」「あ、ああ……機会があればな」 熱烈な歓迎ぶりに、カリナはタジタジだ。このままでは胴上げでもされかねない雰囲気を感じ取り、カリナは素早く空を見上げた。「では、私は報告があるから戻る。後は任せるよ」「はっ! この御恩は忘れません! 緑の戦乙女に栄光あれ!」「戦乙女に栄光あれ!!」 数百人の兵士達が一斉に剣を掲げ、勝鬨を上げる。その熱狂的な声を背に受けて、カリナは再びペガサスを召喚し、隊員と共に空へと舞い上がった。 太陽はまだ高く、まぶしい日差しが照り
ヒースの部屋を出てロビーに戻ると、そこは殺気立った空気に包まれていた。 負傷している者、装備を点検して飛び出していく者。怒号と悲鳴が飛び交う中、数人の冒険者が地図を囲んで深刻な顔で話し合っているのが耳に入った。「南西の防衛線が危ない! 急造の砦を築いて凌いでいるが、魔物の数が多すぎる!」 「正規軍の騎士団も限界だ。このままじゃザラーまで雪崩れ込んでくるぞ!」 彼らの会話を聞いたカリナは、迷わず彼らの元へと歩み寄った。「その南西の砦、私が加勢に行こう」 凛とした声に、冒険者達が振り返る。だが、彼らの目に映ったのは、フリルたっぷりの緑のドレスコートを着た、深窓の令嬢のような美少女と、二足歩行の猫だった。「はぁ? なんだお嬢ちゃん、迷子か?」 「悪いが今は遊んでる場合じゃねぇんだ。お人形さんごっこなら他所でやってくれ」 男達は呆れたように手を振って追い払おうとする。無理もない。この血生臭い状況に、カリナの姿はあまりにも不釣り合いだった。「遊びじゃない。私は冒険者だ。その砦に向かうと言っているんだ」 カリナが出口へ向かおうとすると、男達が慌てて立ちはだかった。「おい待て待て! 死にに行く気か!?」 「そこはピクニックに行く場所じゃねぇんだぞ! そんなフリフリの恰好で戦場に行ってみろ、魔物の餌になるだけだ!」 「悪いことは言わねぇ、家に帰ってママのミルクでも飲んでな!」「隊長は凄いのにゃ! お前達こそ控えおろうなのにゃ!」 彼らは本気で心配し、必死に止めようとしている。根は良い奴らなのだろう。だが、今は一刻を争う。カリナは懐からAランクのギルドカードを取り出し、彼らの目の前に提示した。「忠告は感謝する。だが、心配は無用だ。私はAランク冒険者のカリナ。組合長ヒースからも直々に討伐の許可を得ている」 黄金色に輝くカードを見た瞬間、男達の顔色が変わり、ロビー中がどよめいた。「え、Aランク……!? この歳でか!?」 「ま、待てよ、カリナって……あのルミナス聖光国を救ったっていう、エデンの凄腕召喚士か!?」 噂はここまで届いていたらしい。彼らの表情が、驚愕から縋るような希望へと変わる。「あんたがあの英雄なのか……?! 俺達じゃどうにもなんねぇ数なんだ! 頼む、仲間達を助けてやってくれ!」「ああ、任された。吉報を待っていてくれ」「任せておくにゃ」
エデンを飛び立ち、ペガサスに乗って北西へ。眼下には雄大な景色が広がる。高度が上がるにつれ風は冷たくなり始めていたが、ペガサスの発する魔力の加護と、ルナフレアから渡された厚手のコートのおかげで、空の旅は快適そのものだった。 やがて右手遠くに、堅牢な城壁に囲まれた巨大な都市が見えてきた。無数の塔と城壁が幾重にも連なる、武骨ながらも美しい石造りの国。「あれが初期五大国の一つ、今の騎士国アレキサンドか……」 かつてゲーム時代、メインキャラであるカーズも、そしてこのサブキャラであるカリナも、冒険のスタート地点として選んだのがこの国だった。騎士や剣士など、物理防御と攻撃に特化した兵科を多く輩出する国。兄設定であるカーズがカシュー達とエデンを建国するずっと前、初心者時代に剣の腕を磨いた場所でもある。懐かしい景色に目を細めつつ、カリナはそこを通過し、さらに西へと進路を取った。 何度か地上に降りてペガサスを休ませ、隊員と軽食をとりながら進むうちに、太陽は西の地平線へと沈みかけ、空が紫と茜色のグラデーションに染まり始めた。「隊長、そろそろ日が暮れますにゃ。お腹も空いたにゃ」「そうだな。夜間の飛行は視界も悪いし、今日はこの辺りで宿をとろう」 カリナは眼下に見えてきた街の近くにペガサスを降ろした。労いの言葉と共に送還し、隊員を連れて徒歩で街の南門へと向かう。 見えてきたのは、高い石壁に囲まれた街。近づくにつれ、カリナは違和感を覚えた。記憶にあるここ「ザラーの街」は、ゲーム開始直後のプレイヤーが集まる、のどかで開放的な初心者用の街だったはずだ。 だが、目の前にあるのは、無数の傷跡が刻まれた分厚い城壁と、物々しいバリケード。100年という時は、平和だった始まりの街を、魔物の脅威に晒される最前線の拠点へと変貌させていたのだ。 石造りの門の前には、二人の兵士が立っていた。槍を持ち、アレキサンドの紋章が入った鎧を着ているが、その眼差しは鋭く、妙に殺気立っている。「止まれ。これより先はアレキサンド領ザラーの街だ。身分証の提示を」「ああ、冒険者だ」 カリナは首に掛けていたギルドカードを外し、兵士に手渡した。兵士は事務的な手つきでカードを受け取り、そこに刻まれたランクと名前を確認する。そして次の瞬間、その目が驚愕に見開かれた。「えっ……Aランク!? それに、名前はカリナ……
演習場での模擬戦は、カリナの圧倒的な勝利に終わった。リーサは完膚なきまでに叩きのめされたが、その表情は晴れやかだった。目の当たりにした召喚術の神髄に、彼女は心の底から感動していたのだ。 その後、一行は玉座の間へと移動した。カシュー王が玉座に腰を下ろし、エクリア、アステリオン、レミリア、そしてカリナとリーサがその前に並ぶ。騎士団の面々やルナフレアは、少し離れた場所で見守っていた。 カシュー王が威厳のある声で告げる。「これより、エルフの召喚士リーサを、エデン王国筆頭召喚術士カリナの代行として任命する」リーサは緊張した面持ちで、カシュー王の言葉に耳を傾ける。「リーサよ、カリナはエデンの特記戦力であり、その力は我が国の要である。しかし、彼女は多忙な身であり、常にこの地に留まることはできない。其方には、彼女の不在時にその力を代行し、エデンを守る重要な役割を担ってもらいたい」「ははっ、身に余る光栄にございます」 リーサは深く頭を下げ、カシュー王の言葉を承諾した。「カリナ、其方からも言葉をかけてやってくれ」 カシュー王に促され、カリナが前に出る。彼女はリーサを見つめ、静かに語りかけた。「リーサ、お前の実力は認める。だが、召喚術の道は険しい。決して慢心せず、精進を怠るなよ」「はい! 肝に銘じます、師匠!」「だから師匠はやめろと言っただろう」 カリナは苦笑しながらも、リーサの熱意を嬉しく思っていた。「リーサ、お前には期待している。エデンを、そして民を守るために、力を貸してくれ」「はい! この命に代えても、エデンをお守りします!」 リーサは力強く宣言し、カリナに忠誠を誓った。その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。 カシュー王は満足げに頷き、玉座から立ち上がった。「うむ。これにて任命式を終了する。皆の者、これからもエデンのために力を尽くしてくれ!」「はっ!」 玉座の間に、騎士達の力強い声が響き渡る。 こうして、エデンに新たな優秀な召喚士が加わった。リーサはカリナの代行として、そして一番弟子として、召喚術の道を歩み始めることとなる。 その後、カシュー王は皆を労い、祝宴が開かれることとなった。宴の席では、騎士達がカリナの武勇伝を語り合い、リーサも熱心に耳を傾けていた。 カリナはルナフレアにジュースのグラスを傾けながら、静かに呟いた。「これ







